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森博嗣『恋恋蓮歩の演習』(講談社文庫)(12/1)

Vシリーズ長編6作目。森博嗣の本はこのところ鬼のように出ていてとても全部は読み切れない。というかここ2作ぐらいどうもいまひとつ面白くない、というか乗り切れない感じがしていた。特に講談社文庫で直前に出た短編集『今夜はパラシュート博物館へ』を読んで(実はまだ最後まで読み終えていないのであるが)、この人はミステリという小説のスタイルを放棄しようとしているのではないか?とさえ思った。もちろんミステリというスタイルにこだわる必要はないのだけれど、それにしては中途半端にミステリっぽい格好をつけているようでどうも好きになれなかった。
そんな訳で本作も文庫化されてからけっこう長い事放って置いたのだが、まあメインシリーズぐらいは読まんとあかんかなあと思ってようやく買って読んでみた訳だが、読んでみるとなんのことはないいつも通りの面白さで、ミステリとしての魅力も十分に備わっている。ただ今に始まった事ではないが、メインのストーリー以外の、サブストーリーのようなものは前作、前々作から引き継いでいるものが多く、言ってみれば「連作長編」といった趣になっている。このシリーズを始めて読む人は素直に1作目から読む事をおすすめする。

都築道夫『退職刑事 1』(創元推理文庫)(11/14)

かつては硬骨の刑事であったが、すでに退職して久しい父親が、息子の現職刑事の元を訪れ、現在手がけている事件の話を聞くだけでその事件を解決してしまうと言う、典型的な「安楽椅子探偵」のスタイルによる連作短編集。
この前読んだ山田正紀の『蜃気楼・13の殺人』(光文社文庫)の解説の中でちらっと名前が出てきたので興味を惹かれて読んでみた。都築道夫の作品はまともに読むのはこれが初めてである。
この人の持ち味なのか、発表された媒体の性質上なのか、普段読んでいるような新本格ミステリではあまり出てこない生々しい表現や会話にちょっと戸惑ったが、まあ慣れれば気にならないレベル。文庫本で30〜40頁くらいの短編であるが、その尺の中で冒頭で魅力的な謎(例.全裸に男物のブリーフ1枚で殺されていた女、ジャケットを着た上に背広2枚をむき出しで抱えた青年等)を提示し、そこから話を広げた上でやや強引とも思える展開によって解決に至る構成はさすがに見事である。
ただ話によっては技巧に走りすぎるというか、論理をもてあそぶようなところが見られて興ざめするようなところがある。上手くいった場合は非常に魅力的なのであるが…。
あと、ほとんど親子二人の淡々とした会話だけで話が進行するので、1冊通して読むとちょっと飽きるところがある。あまりまとめて読まないで、気の向いた時に1編づつ楽しむのが良いような気がした。

山田正紀『蜃気楼・13の殺人』(光文社文庫)(11/4)

1990年に書かれたミステリ作品。作者によって再刊を「封印」された形になっていたが、2002年に加筆した上でようやく文庫化されたもの。
東京での生活に挫折した一家が山間の村に移住してくるが、そこで様々な事件に出くわす。密室同然のマラソンコースから13人の人間が忽然と消え、その内1人が死体で発見されるが、ふたたび姿を消してしまう…。トラクターの下敷きになって死んでいる男が発見されるが周辺の空き地にはトラクターの車輪の後が全く見つからない…。しかもこれらの事件は村に伝わる古文書に書かれている内容と不思議に一致するのだった…。
こう書くと伝奇ミステリのように思えるが、実際には伝奇ミステリ的なところは少なく、むしろ社会派ミステリというべきだろう。作品中で提示される謎・その解決ともに魅力的であるが、評価が分かれるとすれば、通常のミステリのように結末で一気に謎が開示される訳ではないところだろうか。他の作品で探偵として活躍する風水林太郎が最初と最後に登場するのだが、特に謎解きをする訳ではない。謎解きは、東京から移住してきた一家の父親と祖父が行うのだが、それも協力して行う訳ではなく、個別に、しかもばらばらと小出しに行われる。
そういうストーリーになっているだけあって、ミステリ特有の謎解きによるカタルシスという要素は少ない。むしろ、徒労感、虚無感といった読後感が強いのだが、しかし山田正紀氏の作品を読んだ事のある読者なら判ると思うが、氏の作品ではそういった読後感はおなじみのものだ(デビュー作である『神狩り』からしてそうだった)。そういう意味では非常に山田正紀らしい作品といえる。

エドワード・D・ホック『サム・ホーソーンの事件簿III』(創元推理文庫)(10/29)

多芸多才なミステリ作家、エドワード・D・ホックによるシリーズ短編「サム・ホーソンもの」の第3短編集。アメリカの田舎町、ノースモントを舞台に、町医者のサム・ホーソーン先生が次々と巻き起こる怪事件を解決していくというものであるが、1974年に第1作が発表されてから今年まで30年間書き続けられ、全部で65篇もの作品が発表されているという息の長いシリーズである。本書にはその25篇目〜36篇目までが収録されている(シリーズ外の短編も1編収録)。
しかも、作中での時間設定も、作品の発表順に時系列になっている。ストーリーそのものは1話完結だが、主要人物が死んだり結婚したりという設定は引き継がれていくので、ノリとしては長尺連続TVドラマに近い。ちなみに第1篇での作中時間は1922年3月という設定。最新話(巻末の解説による)第65篇では1942年10月が舞台なので、20年と7ヶ月が経過したことになる。3.8ヶ月に1回、事件に遭遇している計算だ。
1編がかなり短めなので、話の印象としてはわりと淡泊というかあっさりしている。毎回披露されるトリックはなかなか見事だが、1,2篇読むだけでは正直物足りない。やはり1作目から続けて読んで、作中でのゆったりとした時間の流れを楽しむのが良いと思う。

篠田真由美『美貌の帳』(講談社文庫)(10/18)

建築探偵桜井京介シリーズの6作目。筆者による「あとがき」によれば前作までが第一部、今作からが第二部、という位置づけになるそうだ。
前作『原罪の庭』で、重要なサブキャラである「蒼」の出で立ちが描かれ、彼についての謎が一応解かれた、ということでの第一部完結なのだろう。とすれば今作で始まる第二部ではある意味「蒼」以上に謎が深そうな主人公桜井京介についての謎が解き明かされるのかも知れない。もっとも私の場合文庫化されてから読んでいるので、実際には講談社ノヴェルズ上では既に10作目(短編集含む)まで進行しており、その答えは既に出ているのかも知れない。
ミステリとしての感触は、シリーズものとしての調和を乱さない感じでそつなく描かれている(強いて言うならやや平坦な印象がないでもない)。「建築探偵」シリーズだけあって毎回「建築」が謎解き上重要な要素になっているのだが、今作ではいまひとつその要素が薄いな、と思っていたら結末でしっかり意表を突く形で絡んできたのは見事。
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Author:freeflow
日々鬱病と未聴CDと戦いながらCD買い物依存症から抜け出せない、そんな奴です。

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