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山田正紀『蜃気楼・13の殺人』(光文社文庫)(11/4)

1990年に書かれたミステリ作品。作者によって再刊を「封印」された形になっていたが、2002年に加筆した上でようやく文庫化されたもの。
東京での生活に挫折した一家が山間の村に移住してくるが、そこで様々な事件に出くわす。密室同然のマラソンコースから13人の人間が忽然と消え、その内1人が死体で発見されるが、ふたたび姿を消してしまう…。トラクターの下敷きになって死んでいる男が発見されるが周辺の空き地にはトラクターの車輪の後が全く見つからない…。しかもこれらの事件は村に伝わる古文書に書かれている内容と不思議に一致するのだった…。
こう書くと伝奇ミステリのように思えるが、実際には伝奇ミステリ的なところは少なく、むしろ社会派ミステリというべきだろう。作品中で提示される謎・その解決ともに魅力的であるが、評価が分かれるとすれば、通常のミステリのように結末で一気に謎が開示される訳ではないところだろうか。他の作品で探偵として活躍する風水林太郎が最初と最後に登場するのだが、特に謎解きをする訳ではない。謎解きは、東京から移住してきた一家の父親と祖父が行うのだが、それも協力して行う訳ではなく、個別に、しかもばらばらと小出しに行われる。
そういうストーリーになっているだけあって、ミステリ特有の謎解きによるカタルシスという要素は少ない。むしろ、徒労感、虚無感といった読後感が強いのだが、しかし山田正紀氏の作品を読んだ事のある読者なら判ると思うが、氏の作品ではそういった読後感はおなじみのものだ(デビュー作である『神狩り』からしてそうだった)。そういう意味では非常に山田正紀らしい作品といえる。
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日々鬱病と未聴CDと戦いながらCD買い物依存症から抜け出せない、そんな奴です。

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