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音楽と文学と映画と美術のための落書き Since 2000/7/29

●音楽四方山話 第16回 そして3人が残った●

と言えば、もちろん英国プログレバンド、ジェネシスの1978年発表のアルバム『そして3人が残った』(原題『...And Then There Were Three...』)ですね。スティーブ・ハケット(Gt)の脱退により、フィル・コリンズ(Dr/Vo)、マイク・ラザフォード(Bs/Gt)、トニー・バンクス(Ky)の3人体制になってしまったことから名付けられたアルバム名ですが、今回はちょっとひねくれて、ジェネシスではなく、もう1つの「3人になってしまったバンド」、即ちジム・モリソン(Vo)の死により、レイ・マンザレク(Ky)、ロビー・クリューガー(Gt),ジョン・デンズモア(Dr)の3人体制になってしまった、ドアーズのその3人体制時代について書いてみたいと思います。


ジム・モリソンというあまりにも巨大なカリスマの死後、残された3人のメンバーはドアーズとしての活動を続けることを選択する。しかし、その活動は地味なものにならざるを得なかった(ジム・モリソンの死の直後、ドアーズは解散した、と思っている人も多いのではないだろうか?)。
彼らは、1971年に『Other Voices』、翌1972年に『Full Circle』の2枚のアルバムをリリースするが、米ビルボードチャートは、それぞれ31位、68位(米版Wikipediaに依る)と振るわなかった。結局この2枚を残して、3人体制のドアーズは活動を終了することになる。
それでは、さっそくその2枚のアルバムを聴いてみよう。まずは『Other Voices』から。

Other Voices(Elektra)

A1.In The Eye Of The Sun
A2.Variety Is The Spice Of Life
A3.Ships w/ Sails
A4.Tightrope Ride

B1.Down On The Farm
B2.I'm Horny. I'm Stoned
B3.Wandering Musician
B4.Hang On To Your Life
A1:ミドルテンポの、軽快な感じのする曲。ドアーズ特有の 、グルーヴ感が感じられる。ヴォーカルはレイ。長めの間奏はややだれるが、最後の方、ギター、ベース、オルガンが一体となって間奏を終結させる流れはかっこいい。ただ、アルバムの1曲めとしてはやはり地味。
A2:いきなりドラムの連打で始まり、オルガンが後を取って展開していく曲。1曲めよりはグルーブ感が強いし、派手だ。こっちを1曲めにしても良かったのでは?ヴォーカルはレイとロビーのツインヴォーカル。
A3:7分半ある長い曲。静かに始まり、次第に盛り上がっていく曲だが、いまひとつ盛り上がれずに終わってしまう。間にヴォーカル部を挟んだ、長いインストゥルメンタル部は、もう少し整理したほうが良かったのでは?、と思えなくもない。全編でコンガが入っていて、レイのオルガンと合わせて、どこかエキゾチックなムードがある。ヴォーカルはロビー主体でレイがバックを取るスタイル。
A4:かっこいいギターのリフから始まる良曲。ドアーズ特有の、うねるようなグルーヴ感あり。ヴォーカルはレイがメイン。
B1:レイのオルガンから始まる、スローバラード、と思わせて、途中からテンポが上がったり、またスローになったりと、複雑な構成の曲。最後の部分は、レイのオルガンが「ハートに火をつけて」あたりを思わせる音色で、ヴォーカルも渋く決まる。
B2:オルガンから始まり、ベース、ドラム、ギターの順で参加していって盛り上がる曲。サビ部分は結構かっこいい。ヴォーカルはレイ、ロビーのツインスタイル。
B3:6分を越える長めの曲。レイのオルガンによる、長いイントロから始まり、ヴォーカル部は少なめのインスト主体の曲。そう考えると、やや地味。ヴォーカルはレイがメイン。
B4:ドラムとコンガから始まり、その後もパーカッションがうまく使われている印象に残る曲。レイとロビーのツインヴォーカルも力強い。終わった、と思わせておいて、まるきり違う感じのインスト部に突入し、また唐突に(今度こそ)終わる。やや整理が必要か、と思わせる曲。

ということで、アルバム全8曲を聴いての印象は、今回この記事を書くために聴き直した訳だが、初めて聴いた時よりは好印象。なかなか良い曲もある。
ただ、アルバム全体を通してみると、どこかとっちらかった感があるのは否めない。とりあえず、持っている手札全部晒してみたけど、まだ何の役もできていない、あるいは仏作って魂入れず、みたいな感覚がつきまとう。
ここからは妄想だが、4人体制時代のままの音にするか、過去とは決別して、新しい音を追求するか、3人にも迷いがあったのではあるまいか。
やはりジムという中心というか核があってこそ、まとまっていたバンドなんだな、と改めてジム・モリソンの不在を痛感させられた。

続いて、『Full Circle』。

Full Circle(Elektra)

A1.Get Up And Dance
A2.4 Billion Souls
A3.Verdilac
A4.Hardwood Floor
A5.Good Rockin'

B1.The Mosquito
B2.The Piano Bird
B3.It Slipped My Mind
B4.The Peking King And The New York Queen
A1:オープニングにふさわしいキャッチーなノリの曲。どことなく、ソウルというか黒っぽい感じがする(女性バックコーラスが入ってる辺りか)。ヴォーカルはいつになく力強い感じのレイ。
A2:これは明らかにロビー中心の曲。ヴォーカルも、目立っているギター(アコギとエレキをうまく使い分け)も。対してレイのオルガンは本当にひっそりという感じで演奏されている。これもけっこうキャッチーで悪い曲ではない。
A3:即興音楽っぽいイントロで始まる曲。ロビーのワウワウギターや、サックスの音などはかなりサイケっぽい。一応ヴォーカル部分はあるもの、楽器の演奏が主体である。
A4:一転して、レイ中心の曲。ホンキートンク調のピアノとオルガンをうまく弾き分けている。女性バックコーラスやら、各種パーカッションも入って、ゴージャスな印象を与える。ハーモニカはロビーによるもの。
A5:4人体制時代のドアーズを彷彿とさせる曲。各楽器のバランスが良く、まとまりを感じる。ジムがヴォーカルを取っていたとしても、違和感はなかっただろう。
B1:ラテン風なヴォーカル(レイでもロビーでもないように聞こえるが誰が歌っているのか?)パート→パーティ会場っぽいSE主体のパート→再びラテン調ヴォーカルパート→即興演奏というか、ジャムっぽいインストパート。の複雑な構成の曲。このアルバムの中心的存在と言うべきか。
B2:ロビーのヴォーカル中心の曲。パーカッションやフルートも入っているが、今ひとつまとまりがなく、散漫な印象を与える。
B3:ヴォーカル、楽器共にレイとロビーががっつり組み合った、という感じの曲。そこにジムが入る余地はないだろう。
B4:再び、4人体制時代を思い起こさせる曲。ジムがヴォーカルを取っていたら、それなりに名曲になったかも知れないが、レイではやや力不足なのを否めない。

アルバム通しての感想は、曲単位ではけっこういい曲が多いが、全体を見るとまとまりがない印象を受ける。4人体制時代を思わせるA5、B4のような曲もあれば、A4やB3のように、明らかに新天地を切り開こうとしたと思える曲もある。
女性バックヴォーカル(クレジットにはクライディア・キングの名前も)やパーカッション、サックスやフルートの導入など、全般的には新しい方向へ舵を取ろうとしているように思える。が、成功しているとは言い難い。

結局2枚のアルバム通しての印象は、やはり「ジム・モリソンの不在」これに尽きる。いい曲もあるのだが、それはあくまで「あのジム・モリソンのいたドアーズの曲」というのを前提にしない上での評価だ。
残された3人にとって、「ドアーズ」の名前を使うのが、どういう意味を持つ行為なのかを、どれだけ意識していたのかは判らない。
しかし、4人体制時代でも、実際に曲を作る上では、自分たち3人もそれなりに貢献していたはず、という自負のようなものはあったと思われる(実際に、ドアーズの曲の大半は、レイとロビーによるもの、という説もある)。それだからこそ、敢えて解散や別名義での活動ではなく、「ドアーズ」の名前を引き継ぐことにしたのだろう。それが容易な道でないことは、おそらく残された3人が一番よく判っていたはずだ。

ちなみにこの2枚のアルバムであるが、私の所有しているのは、2in1で2枚のアルバムを1枚にした、Butterfly Productionsというレーベルから、1995年に出たものだが、これは正規盤ではないようである。
正規盤としては、2015年にRhinoからデジタル・リマスタリングされ、シングルB面曲を1曲追加した2枚組が出ているようなので、興味のある人はそちらを購入するべきだろう。


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さて、3人体制でのドアーズの活動は、この2枚で終わりを告げるのだが、もう1枚、どうしても取り上げざるをえないアルバムがある。それが1978年に、「Jim Morrison music by The Doors」というややこしい名義で発表された『An American Prayer』というアルバムだ。
これは、ジム・モリソンの死後、残された音源を調べた際に、詩の朗読という形で録音されたテープが見つかり、それに3人体制ドアーズが音楽を付ける、といういわば3.5人体制で作られたアルバムだ。
(クリックするとamazonに飛びます)An American Prayer(elektra)
Awake
 1.Awake
 2.Ghost Song
 3.Dawn's Highway
 4.Newborn Awakening
To Come Of Age
 5.To Come Of Age
 6.Black Polished Chrome
 7.Latino Chrome
 8.Angels And Sailors
 9.Stoned Immaculate
The Poet's Dreams
 10.The Movie
 11.Curses, Invocations
World On Fire
 12.American Night
 13.Roadhouse Blues
 14.The World On Fire
 15.Lament
 16.The Hitchhiker
An American Prayer
 17.An American Prayer
 18.Hour For Magic
 19.Freedom Exists
 20.A Feast Of Friends
Bonus Tracks
 21.Babylon Fading
 22.Bird Of Prey
 23.The Ghost Song
1:これは詩の朗読音源ではなく、ライヴ音源からのもの。ジムが客を煽る際によく使用した、「Wake Up!」という叫び声。
2:詩の朗読音源に3人の演奏をかぶせたもの。ジョンの呪術的な印象のするドラムを中心に、3人の演奏はよくまとまっており、ジムの朗読とも良く合っている。4人体制ドアーズのアルバムの中に入っていてもおかしくない出来栄え。
3:ジムのつぶやくような朗読メインの曲。演奏は付与されておらず、風の音やパトカーのサイレンの音などのSEが控えめにかぶせてある。
4:3人の息の合ったイントロに始まり、ジムの朗読が少しあった後、ジムが歌い出すが、この形で残されていたのか、どこかの音源から引っ張ってきたのかは不明。後半は演奏控えめに、朗読メインになる。これも「曲」として成り立っている。
5:これも朗読メインで、SEが控えめにかぶせてあるだけ。
6:3人の演奏はよくまとまっているが、朗読との相性はいまひとつ悪い。
7:3人+αの演奏にうまく朗読が乗っている。成功例。
8:ジムの朗読がひときわ印象的なトラック。中間と最終部に3人の演奏をバックにジムが歌っている部分があるが、これはライヴ音源かなにかから引っ張ってきたものと思われる。
9:これも3人の演奏+ジムの朗読が成功した曲。もともとの詩の朗読が、ややメロディがついたような、抑揚に富んだものなので、演奏との相性も良い。
10:SEに近いレイのシンセ音をバックに、ジムの朗読がひときわ印象的なトラック。ジムの声を左に振ったり、右に振ったりという小細工も成功している。
11:3人の演奏に事務の朗読が乗るパターン。演奏と朗読の相性も良く、これも成功したトラック。
12:ジムの朗読の間に、レイのピアノ不協和音が轟く。後半は観客の声が重なり、そのまま次のトラックへ。
13:これは詩の朗読ではなく、ライヴ音源を1曲まるごと収録。曲が終わった後の、ジムのMCや観客の歓声もかなり長く収録して次のトラックへ。
14:前のトラックからの、観客の歓声に銃の発砲音がかさなり、ジムの朗読、女性の話し声などが入り乱れて終わる。
15:ジムの朗読メインの曲。中間部ではロビーのギターが、終結部ではレイのオルガンが、後ろで奏でられる。
16:ジムの朗読で始まり、やがて背後で「ライダース・オン・ザ・ストーム」がそのまま流れたあと、フェイドアウト。
17:ジムの朗読と演奏との相性は良い。このアルバムの中でも1,2を争う出来映えだろう。さすがにアルバム・タイトルになるだけのことはある。
18:ジムの朗読と3人の演奏。3人は、「ジ・エンド」のイントロ部分を弾いている。
19:ジムの朗読だけの短いトラック。
20:ジムの朗読の背後で緩やかに演奏が始まり、クラシックの有名な曲(作曲家とタイトルが出て来ん)を演奏する。珍しく3人の演奏の方が印象的な曲。
21:水音、クジラの鳴き声などのSEを背景に、ジムの朗読。ジムが語った単語に対応したSEが流れるところが面白い。
22:ジムの朗読そのものが、メロディを伴って歌うように語られている。その朗読だけで十分と判断したのだろう、演奏は付け足されていない。
23:2曲めに「The」を付けた曲名だが、中身の方もほぼおなじ。ややこちらのほうが演奏がアグレッシヴか。曲の終わった後、1分くらいの無音部分に続いて、シークレットトラックが収録されている。ジムの朗読だけの短いもの。

こちらの方も、この記事を書くために久しぶりに聴いた。曲紹介で触れたように、ジムの詩の朗読に曲を付ける、という試みは、成功している曲もある反面、イマイチ冴えない曲もある。そういう面で、アルバム全体の評価はしにくい。
しかし、3人体制の2枚のアルバムでは、絶対的に足りなかったものが、こちらにはある。即ちジムの声である。それがあるだけで、曲が引き締まったような気がする。実際のところ、3人のプレイも、3人体制の2作品よりもこちらのほうが充実しているように聴こえるから不思議だ。
やはり、ドアーズというバンドは、ジム・モリソンという核があってこそのバンドだった、ということを再度認識させられたのだった。

                  了
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◆音楽四方山話◆ 第14回 宇宙時代(スペース・エイジ)の音楽 Part 5

今回は月イチ更新から月2を目指しました。今回で無事終了。するかな?
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  1. Mr Spaceman/The Byrds
    「ミスター・スペースマン」は、1966年発表のシングルで、アルバム『5D(Fifth Dimention)』に収録されている。この時期のバーズは、サイケ・ロック全開なのだが、この曲に関してはあまりサイケではなく、素朴なフォーク・ロックという感じ。「宇宙時代の音楽」というテーマに沿えば、「霧の8マイル」や「5D」の方が(楽調的には)ふさわしいような気がする。



  2. Visa To The Stars/Jean Jacques Perrey & Gershon Kingsley
    電子音楽と言えばこの2人は外せない、ジャン=ジャック・ペリーとガーション・キングスレーのコンビによる曲。そんな人、知らないよ?という人も案外耳にしているだろう曲、あのディズニーランドのエレクトリカル・パレードのテーマ曲の元曲「Baroque Hoedown」を手がけたのが、ペリー&キングスレーである。
    この曲は、1966年に発表された、『The In Sound From Way Out』というアルバムの最後に収録されてるが、このアルバムが、ほぼ全曲、宇宙をテーマにした曲で構成されている。収録曲をあげてみると、
    01.Unidentified Flying Object
    02.The Little Man From Erath
    03.Cosmic Ballad
    04.Swan's Splashdown
    05.Countdown At 6
    06.Barnyard In Orbit
    07.Spooks In Space
    08 Girl From Venus
    09 Electoronic Can-Can
    10.Jungle Blues Fron Jupiter
    11.Computer In Love
    12.Visa to The Stars
    てな感じ。
    この曲だけ、単曲でのYoutube動画が見つからなかった。アルバムまるごと分のがあったので、そちらを貼っておく(29分29秒ありますが)。



  3. Space Oddity/David Bowie
    「スペース・オディティ」は、先日惜しくも急逝したデヴィッド・ボウイの初のヒット曲だが、ひねくれ英Aceはここでも、有名なバージョンを収録せず、それ以前にDeramに録音したバージョンを収録している。これは1980年になって初めて発表されたもの。



    参考として、「有名な」ほうの「スペース・オディティ」の動画も貼っておく。



  4. Everybody gets To Go To The Moon/Telma Houston
    ソウル・シンガー、テルマ・ヒューストンのデビュー・アルバム、『Sunshower』からのシングル・カット。フィフス・ディメンション等を手掛けた、ジミー・ウェッブ作で、アポロ11号の月面初着陸成功を狙ってリリースされたようだが、残念ながら成功しなかった模様。



  5. Footprints On The Moon/Johnny Harris & His Orchestra
    ジョニー・ハリスは主にポピュラー・ミュージック方面のアレンジャーや、TV番組の劇伴音楽家として活躍した人物だが、これは彼の自己名義によるデビュー作。1stアルバム『Movements』にも収録されている。スペイシーな空間感覚がここちよい、インスト曲。この曲のタイトルはジョニーが地下鉄に乗っていたとき、たまたま隣に座っていた男性が読んでいた新聞の見出しからヒントを得たとのこと。



  6. Space Flight/I Roy with Lee Perry
    今まで、ポップ、ロック、ジャズ、ブルース、ソウルといろんなジャンルの音楽が取り上げられてきたが、ついにレゲエの登場。リー・”スクラッチ”・ペリー作の曲をアイ・ロイが歌ったものだ。



  7. Armstrong/John Stewart
    さて、アルバムの最後を締めるのは、ジョン・スチュワートの小ヒット曲。彼はもともとソングライターとして活躍し、その後シンガーソングライターに転身したが、1979年に「Gold」という曲がヒットしたくらいで、いわゆる「一発屋」扱いをされることが多いようである。
    最後の最後にこんな地味な曲を持ってくる辺りが、さすが(色んな意味で)英Aceだなあと感じてしまう。曲自体は、素朴な感じのするフォークソングで、これはこれでアルバムを締めくくるのにはふさわしいと言えるかもしれない。



ということで、Part 2〜Part 5まで、4回を通して、収録曲24曲について解説してみた。改めて振り返ってみると、ポップスあり、ロックあり、ジャズあり、ブルースあり、ソウルあり、レゲエあり、更には世界的ヒットになった曲あり、ほぼ無名に近い曲ありと、実に多種多彩、玉石混淆な1枚だと思う。しかし、そういったいわばジグソーパズルのピースの1つ1つのような曲をまとめて聴くことで、「宇宙時代(スペースエイジ)」というものを理解する一つの切り口になっているような気がしないでもない。



このCDには国内盤もあるようだ。邦題は「宇宙時代のヒッパレー」。…もうすこし凝って欲しかったような気がする。


                                    了

◆音楽四方山話◆ 第13回 宇宙時代(スペース・エイジ)の音楽 Part 4

お待たせしました。Part 4です。なんか、月イチの更新になっていますが、今後はもうちょっと更新ペースを上げたい。できるかな?
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  1. Spaceship To The Mars/Gene Vincent
    ジーン・ヴィンセントは、1950年代に活躍したロカビリー歌手。この曲が発表された1962年は、既に宇宙時代に突入し、月面着陸の具体的な計画が動き出していた時だった(実際に実現したのは7年後の1969年だが)。そんなところから、「月への宇宙船」ではインパクトが少ないということで、「火星への宇宙船」という歌になったのではないかと思われる。



  2. Doctor Who/BBC Radiophonic Workshop
    『ドクター・フー』は、英BBC制作によるSFドラマで、1963年に始まり、途中2回の中断を経て、現在でも放映されているという超長寿番組である。日本では無名に近いが、本国イギリスでは絶大な人気を得ている。
    テーマ曲は、各シーズン毎にアレンジを変えたりしているが、基本的にはロン・グレイナー作曲のものが使われ続けている。
    曲調は、いかにも未来的な、電子音を多用したものである。モーグ・シンセサイザーは当時できたかどうかという時期なので、使われているかどうかは判らないが、電子オルガンやテルミンなどを使っていると思われる。



  3. Twilight Zone/The Ventures
    説明するまでもないエレキ・インストバンドの雄、ヴェンチャーズによる、米国制作の人気SFドラマ、『ミステリー・ゾーン/Twilight Zone』のテーマ曲。かとおもいきや、『Twilight Zone』のテーマは、あの有名なイントロ部分を引用しているだけで、後は別の曲である。
    1964年に発表されたアルバム、『Ventures In Space』という宇宙をテーマにしたアルバムの収録曲。



    参考として、『Twilight Zone』の本物のテーマ曲も貼っておく。



  4. Everyone's Gone To The Moon/Bobby Womack
    1960年台後半〜1980年代にかけて、ソウル方面で活躍したシンガーソングライター、ギタリスト、ボビー・ウーマックが1969年に発表したアルバム、『My Prescription』に収録された曲。
    「みんな月に行っちまった」というサビが妙に物哀しい。



  5. Theme From Star Trek/Leonard Nimoy
    米国制作の、『宇宙大作戦/Star Trek』は日本でも大ヒットした有名なSFドラマだが、この『Greatest Hits From Outer Space』に収録されているのは、TV版のテーマ曲ではなく、出演者の一人、Mr.スポック役のレナード・ニモイによる、なんというか、イメージ・アルバムのようなアルバムに収録されたものだ。正式名は、『Leonard Nimoy Presents Mr.Spock's Music From Outer Space』というもので、中身はインストあり、ニモイの語り入り曲あり、更にニモイが歌っている!曲あり、とバラエティに富んでいる。
    ちなみに、『Greatest Hits From Outer Space』のブックレット裏面は、このレコードのジャケ写になっている(↓のyoutube動画参照)。



    参考として、TV版のテーマ曲も貼っておく。



長くなったので、Part 4はこの辺で。残り7曲はPart 5で。                     つづく

◆音楽四方山話◆ 第12回 宇宙時代(スペース・エイジ)の音楽 Part 3

さて、引き続きPart 3です。今回は何曲取り上げられるかなあ。
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  1. Maid Of The Moon/Dick Hyman & Mary Mayo
    ディック・ハイマンも、メアリー・メイヨも全く聞いたことがない人だったが、調べてみると、2人ともジャズ畑の人らしい。でも、今日ではジャズ方面ではほぼ忘れられ、この曲を収録した『Moon Gas』という1963年発表のアルバムで、モンド/ラウンジ・ミュージックの人として、評価されているようである。
    まだモーグもない時代なので、いわゆる電子音楽とはちょっと言いがたいが、テルミンやその他の効果音をうまく使って、宇宙っぽさを出している。メアリー嬢のヴォーカルは、スキャットのみ。



  2. Two Little Men In A Flying Saucer/Ella Fitzgerald with Sy Oliver & His Orchestra
    ジャズ・ヴォーカルの大御所、エラ・フィッツジェラルドの曲。
    この曲について、調べていて初めて知ったが、「Five (または Three) llittle Men In A Flying Saucer」という子供の遊び歌があるらしい。「10人のインディアン」と同じように、1回繰り返す度に、人数が一人ずつ減っていくというものだ。エラのこの曲は、おそらくこの遊び歌を元にして作られた、と思われる。Aメロのあたりが、遊び歌と歌詞もメロディーも似通っている。まあ、逆の場合も考えられないではないが…。
    ちなみにバックを努める、サイ・オリヴァーはトランペット奏者で、当時のジャズ畑で活躍した人。ペギー・リー等のバックも努めている。



    参考までに、「five Little Men In A Flying Saucer」の動画も貼っておく。


  3. Rockin' In The Orbit [Space Satellite]/Jimmy Haskell & His Orchestra
    ジミー・ハスケルは、1960年代から、編曲者として、また映画音楽の作曲家として、活躍した人。この曲は、1957年にImperialから発表されたもので、ロカビリー調のインスト曲。
    ちなみにこの曲の収録されている、『Count Dowm』というアルバムは、全曲宇宙関係で、収録曲リストをあげてみると、
      A1 Count-Down
      A2 Blast Off
      A3 Weightless Blues
      A4 Rockin' In The Orbit
      A5 Starlight
      A6 Hydrazine
      A7 Moon Mist
      B1 We Get Messages
      B2 Moonlight Cha Cha Cha
      B3 Astrosonic
      B4 Venus
      B5 Asteroid Hop
      B6 Homeward Earth
    てな具合である。ちなみに「Hydrazine」はロケットの燃料として使われる有毒の液体。



  4. Rocket Ship/Vernon Green & The Medallions
    ヴァーノン・グリーン&ザ・メダリオンは、1960年代に活躍したドゥーワップグループ。この曲は1959年にDootoneよりシングルとして発表された。



  5. Telstar/The Tornados
    トルネイドースは、1960年代初頭に英国で活躍したインスト・グループ。結成は、名プロデューサー、ジョー・ミークにより、セッションマンを寄り集めることで行われた。
    1962年、テルスター衛星の打ち上げにヒントを得たミークは、この曲「テルスター」を作曲。UK、US両方でトップチャートを記録する爆発的ヒットとなった。
    当時のインスト曲には珍しく、オルガンがメインのサウンドであり、またクラヴィオリンという特殊な音を出す楽器も使われ、非常にスペイシーな曲となっている。まさしく宇宙時代の大ヒット曲であり、スペース・ロックというジャンルを開拓した曲でもあった。



  6. Happy Blues For John Glenn/Lighrnin' Hopkins
    ジョン・グレンは、言うまでもなくアメリカ人初の宇宙飛行士で、1962年地球周回に成功した。この曲は、それを記念?して、テキサス・ブルースの大御所、ライトニン・ホプキンスが作曲・発表したもの。しかし、曲はいつもの通りのライトニン節、である。



長くなったので、Part 3はここまで。次回に乞う期待。
                               続く

◆音楽四方山話◆ 第11回 宇宙時代(スペース・エイジ)の音楽 Part 2

お待たせしました。年をまたがってしまいましたが、ようやくPart 2です。
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ということで、Part 2ではいよいよ、CD『Greatest Hits From Outer Space』の中身を見ていこう。
曲目一覧…を書くのはめんどくさいので、裏ジャケの写真を今度は大きなサイズで掲載する(クリックで拡大されます)。

spaceage_back.jpg

曲名とアーティスト名の後ろに、小さい字で発表年が記載されているが、それを見て貰えば、大体1950年代末〜1970年の間の10余年間に渡っていることが見て取れると思う(一部、はみ出す曲もあるが)。これは、Part 1の最後で結論を出した「1950年代末〜1960年代末」という宇宙時代の定義と大体一致する。
曲の内容は、それこそ様々で、クラシックあり、ジャズあり、ブルースあり、ロックありと多様だが、まあ、これはとりあえず宇宙に関した曲は適当にぶちこんでしまえ、という大まかな編集方針によるものだと思う。しかし、この混沌とした内容が、宇宙時代(スペース・エイジ)に妙に合っているのも確かだ(と偉そうに書いているが、筆者は1962年生まれなので、ものごごろついた頃には、既に宇宙時代の末期だったわけだが)。

それでは、次に個別の曲について見て、いや、聴いていこう。折角Youtubeという便利なものがあるので、Youtube上に曲があるものは、埋め込んでおいた。


  1. Also Sprach Zarathustra, Op.30/Berliner Philharmonicar, Conductor: Karl Böhm

    1曲目は、リヒャルト・シュトラウス作、「ツァラトウストラはかく語りき」の冒頭部分。映画『2001年宇宙の旅/2001: A Space Odyssey』のテーマ曲として、あまりにも有名だ。冒頭に持ってくるにはこれ以外ないと言う選曲だろう。

    ところで、このCDに収録されているのは、サウンドトラック盤に収録された、カール・ボーム指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏のものであるが、実際に映画で使われたものなのだろうか?映画で使われたバージョンと、サントラに収録されたバージョンが違うというのは、よくある話である。

    で、調べてみると、やはり映画とサントラでは違うものが用いられている事が判った。その辺の経緯は、jurassic_oyaji氏による、R・シュトラウスと「2001年宇宙の旅」というページに詳しく掲載されている。そこに依れば、映画で実際に使用されているのは、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏のものであるらしい。権利関係か何かで、カラヤン版を使用できなかったため、ボーム版を使用した、と推測されているが、おそらくそうであろう。



  2. Destination Moon/The Ames Brothers
    2曲目は、1940年代〜1950年代にかけてアメリカで活躍したヴォーカルグループ、エイムス・ブラザーズの1958年の曲。ナット・キング・コールやダイナ・ワシントンもヒットさせている。おそらく、1950年発表のアメリカ映画『月世界征服/Destination Moon』の影響を受けて作られた曲ではないかと思われる。
    ちなみに、こちらのサイトで日本語訳歌詞が見られる。



  3. Lunar Rhapsody/Les Baxter Orchestra with Samuel J Holfman (Theramin)
    3曲目は、マーティン・デニーと並ぶ、エキゾチック・サウンドの雄、レス・バクスターの曲。1947年に発表された1stアルバム、『Music Out Of The Moon』に収録されている。アルバム名からして、既に「月」であるが、この曲以外にも、「Moon Moods」、「Mist O' The Moon」、「Radar Blues」などという曲もある。サミュエル・J・ホフマンによるテルミンをフューチャーした、宇宙感覚溢れる曲だ。



  4. Rocket To The Moon/Moon Mullican
    4曲目は、ムーン・マリカンの曲。名前に既に「月」が入っている。マリカンは、ブルース、カントリー、ロカビリー等幅広い分野で活躍したピアニストで、そういうジャンルをまたがって活躍した人の常として、今ひとつ知名度が低い。
    この曲は、1953年にKingレーベルよりシングルとして発表された。



  5. Forbidden Planet/David Rose & His Orchestra
    1956年、アメリカMGM制作のSF映画、『禁断の惑星/Forbidden Planet』のテーマ曲。
    と、単純に思っていたのだが、【コラム】 映画と音楽 第8回「禁断の惑星」というページに依ると、映画で実際に使用された音楽は、ルイスとビーブのバロン夫妻によって作曲・演奏されたものだが、いわゆる「電子音楽」であったため、曲として認められず、クレジットされなかったと言うことらしい。
    更に事態をややこしくしているのは、同年、デヴィッド・ローズ・アンド・ヒズ・オーケストラ名義で、「Forbidden Planet」というシングルが発売されたことで、このシングルは、当初『禁断の惑星』のテーマ曲として使用されるべく作曲されたが、結局はバロン夫妻の音楽が採用された結果、お蔵入りとなったものだというのだ。
    Youtubeを「Forbidden Planet」で検索すると、バロン夫妻版と、デヴィッド・ローズ版が混在している。両方を聴いて確認してみたが、この『Greatest Hits From Outer Space』に収録されているのは、クレジット通り、実際の映画では使用されなかった、David Rose & His Orchestraのものだ。
    参考までに、両方のYoutubeを貼っておく。

    デヴィッド・ローズ版


    バロン夫妻版


  6. Flying Saucers Rock'n Roll/Billy Riley & His Little Green Men
    ビリー・(リー)・ライリーは、初期ロカビリーの伝説的スター。バックバンドの、リトル・グリーンメンと言うのも、なんとなく異星人を連想させる名前である。
    この曲は、1957年にSUNレーベルよりシングルとしてリリースされた(ピアノを弾いているのは、ジェリー・リー・ルイス)が、この『Greatest Hits From Outer Space』に収録されているのは、初期テイクで、ジェリー・リー・ルイスは参加していないバージョンらしい(ブックレットの解説による)。
    参考までに、両方のYoutubeを貼っておく。

    初期テイク版


    リリース版


ということで、最初の6曲について解説したが、だいぶん長くなったので、以降は次回ということにさせていただく。このペースだと、Part 5くらいまで行きそうだなあ。
                                               つづく